人気YouTuberヒカルが、キャリア史上最大にして最も野心的なプロジェクトに乗り出した。宅配ピザチェーン「ナポリの窯」の再建である。これは単なる一時的なコラボレーションではない。彼らは株主として経営に参画し、企業の運命そのものを背負う。
この挑戦は、ヒカルという一人の天才の物語にとどまらない。ヒカル、入江祥雄、高橋雄大という異能の天才3人による「三位一体」の最強チームが仕掛ける、固定化されたピザ業界の勢力図を塗り替える、壮大な実証実験の幕開けである。
炎上のどん底から生まれた最強チーム
チーム「ヒカル」の物語は、輝かしい成功ではなく、一人の天才が社会から抹殺されかけた逆境から始まった。
過去、「VALU事件」によってヒカルは社会的な信用を完全に失墜。自身の言葉を借りれば「世の中全部が敵」という状況に陥った。事実無根であるにもかかわらず「反社」というレッテルを貼られ、決まっていた案件を潰されるなど、業界内で完全に孤立した。
この絶望的な状況で、運命の歯車を回したのが高橋雄大だ。彼は、後にチームの頭脳となる投資家・経営者の入江祥雄をヒカルに引き合わせた。しかし、その出会いは劇的なものではなかった。ヒカルは、会う価値はないと仮病を使って一度は面会を断り、再度セッティングされた約束にも2時間遅刻。当初は入江のことを「大したことないやつだな」と見ていた。
だが、入江の視点は全く異なっていた。彼はこの危機的状況を「逆にラッキーだと思って」いたと語る。それは単なる楽観主義ではない。成功している人物に乗じるのではなく、「うまくいってない時に一緒に成功させたら信頼が積み重ねられる」という、代替不可能なパートナーシップを築くための計算された戦略だった。入江は、社会全体から非難されながらも不屈の精神を失わないヒカルの姿に、事業家としてのポテンシャルを見出したのだ。
この出会いを経て、ヒカル、入江、高橋、そして撮影を担当するまえすの4名で結成されたLINEグループ「願いが叶う会議」は、まさに復活への戦略司令塔となった。ここで練られた緻密な戦略が逆転劇の土台となり、彼らは単なる協力者ではない、運命共同体としてのチームを形成したのである。
成功の方程式「三位一体」の役割分担
彼らのチームは、ヒカル自身が「ダブルフォワードと優秀な軍師」と表現するように、それぞれの才能が完璧に補完し合うことで機能する。その関係性は、人気漫画『キングダム』において、戦場で武功を上げる主人公・信と、国家経営で中華統一を目指す王・嬴政の関係にも例えられる。「目指す頂は同じだが、戦う場所が違う」。この絶妙な役割分担こそが、彼らの「勝利の方程式」だ。
- ヒカル:圧倒的主人公力を持つ「攻め」の司令塔 チームの顔であり、エンジン。自身の絶大な影響力と卓越した「目利き力」で熱狂的な需要を創出し、事業拡大の原資となるキャッシュを生み出すことが最大の役割だ。入江が最も感銘を受けたのは、スキャンダルの渦中にあっても「心が折れてなかった」その不屈の精神力だった。
- 入江祥雄:キャッシュを帝国に変える「攻め」の戦略家 ヒカルが生み出したキャッシュを元手に、不動産投資や事業買収といった大規模な事業展開を実行し、資産を何倍にも増殖させるもう一人の「攻め」の要。「お金でお金を生む」役割を担う。ヒカルが直感型の天才であるのに対し、入江は膨大なインプットで自身を磨き上げる「努力の天才」と評される。ヒカルは「普通の人だったら1個持ってればそれでお金になる才能を10個ぐらい持ってる」とその万能性を絶賛する。
- 高橋雄大:最後方を支える「守り」の軍師 前線には立たず、後方支援に徹する戦略家。ヒカルが「音を外さない」「精密機械みたいな感じ」と評するように、その計画の正確性には絶大な信頼が置かれている。攻撃的なヒカルと入江のブレーキ役となり、チームが致命的な失敗を犯さないようバランスを取る、守りの要である。
この完璧な役割分担により、チームは個人の能力の総和をはるかに超える相乗効果を生み出し続けている。
YouTubeを核とした事業帝国の拡大
この最強チームは、「三位一体モデル」を具体的なビジネスで次々と成功させてきた。その事業拡大の軌跡は、彼ら独自のビジネスモデル「メディアコマース・フライホイール」の有効性を証明している。これは、事業活動がYouTubeコンテンツとなり、そのコンテンツがマーケティングとして機能して事業を成長させ、生み出されたキャッシュが次の事業に再投資されるという、自己強化型の経済エコシステムだ。
- 成功の原点「ReZARD」 チーム結成後に最初に取り組んだ大規模プロジェクトが、アパレルブランド「ReZARD」だ。この成功、特に安定した収益を生むサブスクリプションモデルの導入は、チームにとって決定的な転換点となった。サブスク会員数が3万人を超えたあたりから「世界変わりましたよね」と語るように、チームは潤沢な資金を持つ「キャッシュリッチ」な状態へ移行。これにより金融機関からの信用も獲得し、後の大規模な不動産投資へと駒を進める財務基盤を築いた。
- 帝国拡大の鍵「ホテル・ヴィラ事業」 ReZARDで得た資金を元手に、彼らは不動産事業へと進出する。ここでの強みは、YouTubeを核とした二重の「アンフェア・アドバンテージ(不公正な競争優位性)」だ。第一に、入江の「買った時点で勝利が確定している」優良資産を見抜く投資手腕。第二に、物件の購入から改修、運営開始までの一連のプロセス全てを魅力的なYouTubeコンテンツとして配信する、ヒカル自身が「チートみたいなもん」と語るマーケティングモデルだ。これにより、広告宣伝費はほぼゼロになり、設備投資でさえも収益化する。その効果は、山梨の高級ヴィラのVIP棟が1泊40万円という高価格にもかかわらず、稼働率86%という驚異的な数値を記録していることからも明らかである。
最大の挑戦:ピザ業界に革命を起こす「ナポリの窯」

そして今、彼らが挑むのが過去最大級のプロジェクト、「ナポリの窯」の再建だ。これは、彼らのビジネスモデルが既存の巨大市場の常識を根底から覆せるかを問う、究極の試金石である。過去のコラボとは根本的に異なり、彼らは株主として経営に深く関与し、業界構造そのものを変革することを目指している。
課題は明確だ。「ナポリの窯」は業界4位でありながら、上位3社(ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハット)との事業規模には巨大な隔たりがある。その差は3位とは約5倍、1位とは約15倍にもおよぶ。
しかし、彼らの参画によるインパクトは即座に現れた。最初の告知動画が公開された日には、売上が3倍に急増。これは、彼らの影響力が既存の巨大市場においても絶大な効果を持つことを証明した。
この巨大な牙城を崩すため、彼らは多角的な革命戦略を実行する。
- YouTubeを「究極のマーケティングプラットフォーム」と位置づけ、事業再生の過程を物語として発信する。コメント欄は顧客の声をダイレクトに収集するチャネルとなり、「バジルピザだけは残してくれ」という声に即座に応えるなど、競合には不可能なスピードで商品開発へ反映させる。
- ヒカルの影響力を最大限に活用し、熱意と質の高いオーナー候補を惹きつけ、フランチャイズ展開を加速させる。そこには、高級ホテル事業で実証済みの「オペレーション・エクセレンスとホスピタリティのフレームワーク」を移植し、品質を担保する緻密な戦略がある。
- 店舗網の不足という弱点を補うため、ピザ自販機やフードトラックといった新たな販売チャネルを開拓し、あらゆる顧客接点を創出する。
まとめ:彼らはなぜ勝ち続けられるのか
ヒカル率いるチームの成功は、単なる偶然や個人のカリスマ性だけでは説明できない。その背景には、緻密に設計された再現性のある成功法則が存在する。
1. 逆境で生まれた最強のチームシナジーチームの力の源泉は、ヒカル、入江、高橋による「三位一体」の組織構造にある。攻撃、再投資、後方支援というそれぞれの役割が完璧に噛み合い、VALU事件という最大の逆境の中で育まれた揺るぎない信頼関係が、その土台となっている。2. YouTubeを核とした独自のビジネスモデル彼らは「メディアコマース・フライホイール」と呼ぶべき独自の経済圏を構築している。YouTubeでの圧倒的な発信力を戦略的な武器として、リアルビジネスの集客やマーケティングを競合他社には不可能なスピードとコストで実現。さらに、その事業活動自体が新たなコンテンツとなり、さらなる影響力を生むという自己強化サイクルを確立している。3. 視聴者を巻き込む「物語」としての経営彼らの最大の強みは、事業活動の全てを「漫画」のような一つの物語として捉える経営哲学にある。フィギュアスケートの「4回転ジャンプ」に例えられるように、彼らは常にハイリスクな挑戦を恐れない。「失敗しよう成功しようとりあえず4回転ジャンプしとけば失敗してから物語が組めるんで」という言葉通り、たとえ失敗したとしても、それすらも視聴者と共有する価値あるコンテンツとなり、次なる成功への伏線になると確信しているからだ。視聴者は単なる消費者ではなく、彼らの成功物語を共に創り上げる「物語の共犯者」なのである。
「ナポリの窯」の再建プロジェクトは、彼らの壮大な物語の中でも最もエキサイティングな章になるだろう。この最強チームが次にどんな革命を起こすのか、これからも目が離せない。



